憲法から確認!アウン=サン=スーチー女史が大統領になるには?

アウン=サン=スーチー女史が憲法の規定により大統領になれないというニュースをよく見るので、憲法の条文を確認してその事実を一応確認しようと思う。

文献

基本的に、参考文献は信憑性の高そうな公的機関のwebページ2つ。

  • ミャンマー連邦共和国憲法の日本語訳については、日本貿易振興機構(JETRO)のアジア経済研究所のwebページを参照した。以降、憲法の条文を参照している箇所については本ページより引用している。
  • ミャンマー議会の構成情報については、議会のホームページを参照した。



大統領になるには?

アウン=サン=スーチー女史が大統領になるには憲法3章第59条6項を改正する必要がある。 配偶者がイギリス人のマイケル・アリス(Michael Vaillancourt Aris)であったため、59条に該当する大統領要件に合致しないためだ。

3章第59条6項(大統領及び副大統領の要件)

本人、両親、配偶者、子供とその配偶者のいずれかが外国政府から恩恵を受けている者、もしくは外国政府の影響下にある者、もしくは外国国民であってはならず、また、外国国民、外国政府の影響下にあるものと同等の権利や恩恵を享受することを認められた者であってはならない。

憲法改正するためには?

では憲法59条について改正するためにはどうすれば良いか。憲法第436条に規定があるが、以下の2つが必要。
  • 連邦議会議員総数の75%を上回る賛成を得る。
  • 国民投票において有権者の過半数の票を得る。

改正するためには(現実的には)軍人議員さんの賛同を得なければなし得ない構造となっている。第436条を見ると、改正対象の条文によって国民投票の有無が異なるようだ。日本の憲法とは違う点である。

12章第436条1項 憲法の第1章の第1条から第48条まで、第2章の第49条から第56条まで、第3章の第59条及び第60条、・・(省略)・・にある規定を改正する場合、連邦議会議員総数の75%を上回る賛成を得た後、国民投票において有権者の過半数の票を得なければならない。

連邦議会というのは、民族院と人民院で構成されており、スーチー女史と対立する軍人議員の数が規定されている(各々憲法第109条、第141条に規定)。簡単にポイントのみ記載する。

  • 民族院(上院):最大224名であり、その中で国軍司令官が法律に従い指名した軍人議員最大56名(25%)
  • 人民院(下院):最大440名であり、国軍司令官が法律に従い指名した軍人議員最大110名(25%)

軍人議員の数は「最大数」が規定されているので、国軍司令官が最大数よりも少ない議員数を指定することは憲法上は可能みたいだ。ただし、現実的には軍が憲法を改正させないための規定と考えられるので常に最大数を指定するのだろう。

そのため、軍人議員さんは各院の議員数の25%を常に占めると考えられる(※)ため、憲法改正をするためには軍人議員さんの賛同を得る必要がある。しかし、対立している軍と協力をするのは難しいため、新聞等では大統領になるのは難しいという結論になっているのだろう。   (※)実際、ミャンマー連邦議会の各政党の構成比率を見ると軍人(military)は25.27%をしめる。

結論として大統領になるためには、 憲法59条の改正が必要であるが、改正のためには総議員の25%を占める軍人議員との協力が必要である ということである。

以上。